エンターテインメントとアートと接待(4)
    2009.06.23 [ Tue ] 16:18

新しさには、常に違和感がつきまといます。

『新しさ』という要素に対して、人が受け入れることができるキャパシティは

意外と小さいものです。


普通の人が求める『新しさ』とは、

『見たことのないモノ』

という意味では無く

『最近飽きてきたモノとは違うモノ』

という意味です。


ここで注意しなければいけないのは

『最近飽きてきたモノ』=『嫌いなモノ』

という意味ではありません。

飽きた、ということはその直前までは好きだったということですからね。

ゲームで言えば、RPGに飽きたからといって,

急にバリバリのアクションゲームをやり出す人はいません。

 

前回、新しさという違和感をポジティブに活かし、オリジナリティとして

表に出すのは作り手が気持ちよい行為だということを最後に書きましたが、

ここに危険が潜むわけです。


作り手の気持ちから見た『新しさ』というのは

『最近飽きてきたモノとは全く違うモノ』

です。

この『最近飽きてきたモノ』と『全く違うモノ』の間には、

因果関係が存在しないことが多い。


 つまり、

『みんな似たようなモノには飽き飽きしてるだろうから、

 オレがいっちょ新しさを見せつけてやるぜ!』


...というような作り手側の気持ちは、ユーザーの気持ちから

かけ離れたところに着地してしまうという危険をはらんでいるわけです。 


違和感をどこまで広げるのか。

広げすぎると、それは作り手のワガママになってしまい、

ユーザーがついてこれない。

あまりにも安全を取ると、作り手が全く面白くない。

この『一度飽きたモノ』と『新しさ』とのミックス具合は非常に難しいのです。


僕自身、いまだにこの"大きな違和感への誘い"と

毎日闘っているようなもんですから。

(続きます)


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ゲームクリエイター

稲葉 敦志

1971年8月28日石川県金沢市生まれ。1992年よりゲーム業界に入り、ゲームメーカー数社を経て1998年に株式会社カプコン入社。2000年よりプロデューサーとしてゲーム制作に携わる。カプコン開発部長を経て、2004年、開発子会社クローバスタジオ株式会社の代表取締役に就任。2006年より独立し、現在はプラチナゲームズ株式会社の取締役&プロデューサー。